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私の居るべき場所
和代さん、橋の下から拾われたんでしょ?
とてもにわかには信じがたい言葉だった…
ど…ゆ…こ…と…
急に血の気が引くような感覚に襲われ倒れそうになるのを必死に堪えた。
彼女は…いったい…何を言ってるの?
なぜ…彼女は…そんなことを…知ってるの?
彼と…私しか…知らない事実を…
信じ…られない…
信じられない…
信じられない…
私は頭の中がパニックになっている…
彼は…毎日私を愛してくれて…
その笑顔はとてもとても優しくて…
これほど私を大切にしてくれた彼が…
今私は…自分の信じてきたものが幻だったのかと…疑ってしまう…
あんなに世の中の弱者の為に必死に頑張っている彼が…彼の本性が…
私の勝手な思い込みに過ぎなかったのか…
私は頭の中が整理出来なくなっている…
なぜ彼女はそれを知ることが出来たの?
あのとき彼は彼女とは何も無いと言っていて…
でも、明らかに不審な行動があって…
彼女は私のことを知っていて…
清原里見は、私が絶望感に陥る様子を楽しんでるかのように続ける。
清原『ねぇ、聞いてます?あなた彼と釣り合うとでも思ってるんですか?
本気で彼があなたを好きだとか思ってるんですか?
ま、彼は優しいからあなたみたいな人に情けをかけるのはわかるけど…でも、勘違いしてますよね?』
もうやめて…もうやめて…もうやめて…もうやめて…
お願い!もうやめてぇ~!
私は壊れた。
もう立っているのがやっとだ…
この場から消えたい…いや、この世界から消えてしまいたい…
全て夢だったと思いたい…
彼のことも夢で、今のこの現実も全て夢で、本当は今もまだ私はあの橋桁の下で段ボールの中で誰とも関わること無く暮らしていて…
戻ろう…私の居るべき場所へ…戻ろう
シンデレラが約束の時間を過ぎても戻らなかったから全て魔法が解けてこんな悲惨な状況に陥ってしまったのだから…
甘い夢に浸りすぎて現実に戻るのが遅すぎた…
清原里見は、私が壊れていくのを楽しそうに見ている…
高笑いしながら…
清原『和代さん、大丈夫ですかぁ?
私、ずっと彼のこと好きだったんですよ。なのにあなたが急に現れて、彼はすっかり変わってしまって、あなたが悪いんですよ?
わかります?
あなたが現れなければ私と彼は…』
そう言って彼女は私を蔑み笑い続けた。
私は力無くこの家を出た…
フラフラと、力無く…階段も足を踏み外しそうなほど危なげに…それでも私の居るべき場所まで戻らなきゃ…早く戻らなきゃ…
彼は…彼は彼女に話したのだろうか…
よりによって一番知られたく無い彼女に…
もうどうでもいい…誰も信用しない…
人を信用することなんてもう昔にやめたはずなんだから…
もう地獄に突き落とされるのは懲り懲りなんだから…
もう生きることすらやめてしまおう…
これ以上生きて何があるというのだろう…
もう十分幸せだった…
十分幸せな夢を見れた…
もういい…もう…
お母さん…私ね…やっとお母さんの所へ行く決心ついたよ…
お母さんもきっと今の私くらい辛かったんでしょう?
私くらい苦しかったんでしょう?
どうして私達は幸せになれないんだろうね?
きっと…前世で悪いことしてきたから罰を与えられているのかな?
ねぇ、お母さんは今どこに居るの?
私はやっとの思いで自分の居るべき場所までたどり着いた。
そこには私が残してきた私の居場所がそのまま残っていて、やっと現実に戻れて…
何故か不思議と安心した…
何故か苦しみから解き放たれたような感覚に…私は涙が止まらなかった…
段ボールの囲いの中で私は横になり泣き疲れて眠りに落ちてしまった…
私は夢を見た…彼が私を探しに来て…全部嘘だよって言って…さぁ、帰ろうって優しく私の手を引いてくれる…
彼の家に二人で戻って、やっぱり何も無く幸せな日々が続いて…
彼と過ごす時間は凄く甘くて
彼に触れられる感触はとても優しく繊細で
彼に抱かれたあとは全身が…
何か聞こえる…
私の幸せな夢を誰かが邪魔する…
なんだろう…誰かが私を呼んでいる…
聞き覚えのある声だ…凄く不快に感じる声だ…
なんだろう…
いや…
誰かが…
私の…
上に…
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