死後の世界?

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死後の世界?

誰かが私の上に馬乗りになっている! 恐怖で身体が硬直して身動きが取れない… 真っ暗でハッキリと何者か判別出来ないが、声の主でそれが誰であるかわかった… 私は絶望の淵に立たされている。 まさか、まさかこんな立て続けに地獄を見ることになるとは思ってもみなかった… 鷲尾…鷲尾賢一…あの男の声だ… 何か言ってる…私は耳を疑った… 鷲尾『和代さん、聞こえますか?和代さん? 迎えに来ましたよ。可哀想なあなたを迎えに来ました。 可哀想に彼に裏切られたんでしょ? 僕が救ってあげますから。彼がここであなたを拾って、そして裏切った。 清原がね、あなたがここに居るだろうから探してあげてって言ってくれたので迎えに来ました。 俺、ずっとあなたを意識してたのに全然気付いてくれなくて… 今度は松橋社長の代わりに俺があなたを拾ってあげますから安心して』 何を言ってるの?何を勝手なことを言ってるの?何でここにあんたなんかが来るの? 神様はそんなに私を苦しませないと気がすまないの? 私は震えが止まらない。 鷲尾は続ける… 鷲尾『和代さん、あの男は清原に任せて俺達は俺達で仲良くしましょうよ。こんな所に居ないで今度は俺の家に住まわせてあげますから。ね?さぁ、行きましょう!』 そう言って私の顔に強引に顔を近づけて来た。 私は必死に抵抗しながら近くに隠してある鉄パイプに手をかけ、力一杯鷲尾の脇腹に突き入れた。 鷲尾がぐぅっと唸って少し怯んだ隙に繰り返し何度か鉄パイプを突き入れた。 鷲尾があまりの痛みに上半身がのけ反り少し身体が浮いたので、今度は両手で鉄パイプを持ち直して顔面に叩きつけた! 鷲尾が後ろにひっくり返った隙に私は立ち上がり力の限り走って逃げだした。 走って走って無我夢中で走って車通りの多い所まで出た。 後ろを振り返ったが誰も追ってくる気配は無い… 私は悲しみのあまり声を出して泣いていた。 大声で泣きながらあてもなく歩き続けた。 誰も居ない所へ行きたい…誰にも会いたくない…誰も信じることが出来ない…せっかく掴んだ幸せだと思っていたのに…唯一信頼出来る人だと思っていたのに… 彼と一緒に暮らし始めたとき、彼は言った… 『和代さん、僕はあなたの自由を奪うためにここへ連れて来たんじゃない。誰もあなたの自由を奪うことなんて出来ない。誰もあなたを束縛しない。もし、ここの生活があなたにとって苦になると感じたのなら、いつでもここを出て構わない。 ただ、もしここを去ろうと思ったのなら、そこの押し入れに棚があります。その引き出しを開けると白い箱があります。その箱の中にあなたにとって必要なものが入ってるので必ずそれを持って行って下さい。』 それは彼の優しさだったが、やっぱり引き止めて欲しかった。 あの優しさも…全て偽りだったの? そう言えば…あの白い箱には何があったんだろう… 確認したことは無かった… まさかこんな日がほんとに来るとは思わなかったから… もう…いいよ…全て終わってもいいよ…もう…疲れた… 私は…フラフラと歩道から車道へ飛び出した… 車のライトが凄い勢いで迫ってくる… 私を楽にして…もう苦しみの無い世界へ連れてって… これ以上切なくて悲しくて苦しい人生なんて… もう要らない… 車からけたたましいクラクションの音と、ブレーキのタイヤの音がキキキーッと鳴って私に向かって一直線に突進してきた。 目をつぶり私は清々しい気持ちで死を迎え入れた。 そのとき頭の中にお母さんの声が響いてくる。 『昌代…昌代…あなたはまだこっちへ来ちゃダメよ…あなたには待ってくれてる人が居るでしょ? あなたを必要としてくれてる人が居るでしょ? その人を悲しませちゃいけないわ…』 お母さん…私はもう何もかも失ったの…もういいの…もう疲れちゃった…だからお母さんの所へ行くわ… 私の身体は凄い勢いでぶっ飛んで何回転もして転がった。 これが死なの?思っていたよりずっと痛くもないし苦しくもない… なんか拍子抜けしちゃう… 車の運転手が降りて駆け寄って来た… 凄い叫んでる。よく死んだら魂は死んだことに気付かずさ迷うとか言うけど…これが死後の世界なんだろうか? 凄く不思議…だって…死んだら普通痛みって無いんだよね? でも、ちょっとだけあちこち痛いよ… しかも…なんか…心地いい感覚が… えっ?これって何? わからない…何故か…私…彼の胸の中に居るような… いや…違う…ここは彼の胸の中だ… どういう…ことだろう…なぜ彼の胸の中に包まれて居るんだろう… 運転手の人がずっと叫んでる… 『大丈夫ですか?大丈夫ですか?聞こえますか?もしもし、もしもーし』 『痛っ…ててててて…』 えっ?この声って…真人…さん? この温もりって…真人さん? どうして? 私…車にひかれて…死んで…それで真人さんに包まれていて… わけがわからない…
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