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助けてくれたのは母の声
この温もりって真人さん?
どういうことだろう…
真人『痛ってぇ~…和代さん…いや…昌代さんか…大丈夫ですか?怪我はありませんか?』
私…生きてる…
いや、彼が私を助けてくれたんだ…
でも、どうして…どうして真人さんが私を助けたの?
彼が彼女に全てバラして私がこんな惨めな思いをしたんじゃ…
あんな酷い目にあったんじゃ…
しかも、何で私の名前を知ってるの?私は和代としか言って無いのに…
真人『昌代さん、怪我はありませんか?』
私『…なぜ?どうしてあなたはここに居るんですか?』
そのとき運転手が膝から崩れ「良かった良かった」と泣いていた。
運転手はすぐに救急車を呼ぼうとしたが、彼がそれを止めた。
真人『昌代さん、大丈夫ですか?』
私『はい…私はちょっと擦りむいただけみたいです…』
真人『良かった…無事で…運転手さん、僕らは大丈夫みたいです…いいから行って下さい…』
運転手は何度も何度もすみませんと言って車を発進させた。
真人『昌代さん…良かった…間に合って良かった…ほんとに良かった…』
彼は泣いていた。男性が号泣しているのを見るのは初めてだった。
私『真人さん…どうして泣いてるの?どうしてここに来たの?どうして私の名前を…』
彼は泣きながら
真人『昌代さん…ほんとに申し訳ない…ほんとに申し訳ない…家に帰ったらあなたが居なくて…そして清原がウチに居て…彼女が昌代さんは鍵もかけずに出掛けてると言って…それで彼女を問い詰めたら…』
私はもしかしたら彼を誤解していたのかも知れない。
なぜ彼女が私の秘密を知ったのかはわからないけど、少なくとも彼は私を裏切るつもりでは無かったのかも知れない。
もしかしたら何か事情があったのかも知れない。
彼は私を自分の危険も省みずに助けてくれた…
私のことを命を懸けて守ってくれた…
ギリギリの所を彼が車の前に飛び出し私ごと飛んで守ってくれた…彼はそのせいで少し怪我をしたらしい。
私は裏切られたわけじゃなかったんだ…
真人『昌代さん、あなたを傷つけることになったのは僕のせいです。僕のミスであなたをここまで追い込んでしまった。どんなに弁解しても許してはもらえないでしょう…でも、聞いてください。』
彼は私を強く抱きしめながら話し出した。
真人『清原が昌代さんのことを知ってしまったのは…僕のミスなんです…それで僕は彼女に昌代さんにその件についてそっとしておいてくれと頼みました。彼女はちゃんと了解してくれたと思ってました…それで僕は油断してました…まさか彼女がこんな大胆な行動に出るとは思ってもみなかった…僕は彼女があなたを追い出したことを知りすぐにあの橋桁の下に向かったんです…でも、そこには…あなたは居なくて…僕はどうしていいかわからず立ち尽くしていました。そしたら…僕の頭の中に知らない女性の声が響いてきて…
「お願い…お願いします…昌代を助けてやって下さい…昌代を救えるのはこの世であなたしか居ないの…お願い…します…」
昌代…?昌代って…もしかして…和代さんのことなのか?
そう思った瞬間、僕はあなたが居る場所が何故かわかって走って走って走り抜いた…そのときあなたはフラフラと歩いていて、急いで駆け寄ったら急に車道に飛び出したりするから、僕は無我夢中であなたに飛びかかりました。
もう大切な人を失いたくは無かった、その一心で…』
そんな…そんなことが本当に起こるものなんだろうか?
確かに死の直前、お母さんの声が頭の中に響いてきた…
お母さんは今でも私を心配してくれていたのか…
私は…あなたに捨てられてなど居なかったんだ…
むしろ…命を懸けてまで必要としてくれるほど愛されていたんだ…
知らなかった…なんでこんなに愛されていたのに彼を疑ってしまったんだろう…
確かに彼の愛は本物だった…優しい眼差しも、私の頬に触れる手も、彼の優しい口付けも、私を抱く時の愛撫も全て愛を感じられた…
なのに…どうして私は彼のことを疑うことが出来たんだろうか…
あともう少しで彼の愛を信じきれないまま全て終わるところだった…
私は…本物の幸せを手にしながら自らそれを手放すところだった…
私『真人さん…ごめんなさい…私…私…あなたを信じぬくことが出来なくて…ほんとにごめんなさい…私は…真人さんを…愛してます』
二人の間にそれ以上言葉は無かった…
二人とも全てわかり合えたから言葉など必要無かったからだ。
お互い何も言葉を交わさず彼は私をお姫様抱っこをしたまま私達の家まで戻った
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