会いたい…

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会いたい…

私はあまりの衝撃にビクッと飛び上がってしまった。 数時間後… 彼の話に聞き入って突然手を掴まれて… 凄く温かく柔らかい彼の手の温もりが今でもずっと残ってて… 何もかもが夢だったような… とても幸せな夢を見ていたような… 彼はそこそこハンサムだった。 だいたい30歳くらいだろうか。 爽やかで優しい笑顔。 物腰も柔らかく穏やかで、時折見せる切なそうな表情が忘れられない。 おそらく彼と私は10歳位の歳の差があるだろう。 彼から見れば私はどう見えただろうか。 顔も汚いし年齢より更に老けて見えただろうから、親と変わらないほど離れて見えたのだろうか… あのあと彼は私を自分の家に来ないかと誘ってくれた。 彼の夢に協力して欲しいと。だから私に…私なんかにスタッフとしての勉強をしないかと…誘ってくれた… 熱心に語って私を誘ってくれたけど… こんな小汚ない私なんかで本当に良いんだろうか? こんな素性もわからない私なんかで良いんだろうか? あの人の真っ直ぐな視線に私は目を背けることしか出来なかった。 眩しすぎるのだ。彼の綺麗過ぎる眼差しが… 私の卑屈になってしまった心を照らすにはあまりにも眩しすぎるのだ。 とても彼の誘いに乗って良いような女ではない。 とても彼の傍に居て釣り合うような女ではない。 優しく温かく迎えてくれたのに私は彼に『自分にはそんな資格は無いし、こんな私を誘ってくれても本気とはとても思えない!』と突き放してしまった。 もちろんそれは本心ではない。 でも、あまりにも急な展開に頭が追い付かず、ついそう言って彼を傷つけてしまったのかも知れない。 幸せなひとときだったが彼はそれ以上食い下がることはせず、ゆっくり頷き少し淋しそうな表情で私に軽く頭を下げて振り返りゆっくり歩いて行ってしまった…虚しくなった。 何故私はいつもいつも素直になれず彼を遠ざけてしまうのか…自分が嫌になる…素直に彼の優しい誘いに飛び込めればどんなに幸せだろうか。 ほんとは彼の傍に行きたい…彼の横でずっと彼を見ていたい…ずっと彼を感じていたい…そう思ってしまうほど知らない内に彼に私の心を全て奪われていた。 恋…なんて…もう何十年してないかも知れない。 私には辛い過去があって、人を純粋に愛することが出来なくなってしまって… こんなに優しい人に出会ったのは初めてで、優しくされたことが無いからどう接していいかもわからなくて… 自分一人で空回りして… 一緒に居たい… やっぱりずっと傍に居たい… また彼は私の前に現れてくれるだろうか… わからない…あんな風に断ってしまったからもう来ないかも… もうチャンスは来ないのかも… せっかく話を出来たのに、全て自分で断ちきってしまったのかも… 涙がこぼれてきた。もう会えないかも知れないと思ったら涙が溢れてきた。 こんなことになるなら、恋をしてしまうくらいなら彼と出会わなければ良かった。 恋は人を弱くする… 一人で生きて行けると思ってたのに、急に一人が淋しく感じられて… もう涙が止まらなくなってしまった。 会いたい… 会いたい… 会いたい… 会いたい… 泣きつかれて知らない内に眠ってしまった。 それから数日、彼をどんなに待っても姿を見ることが出来なかった…
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