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終わりの日まで、残り15日
「そんじゃ、またなー」
「おう」
青年は友人に別れを告げると、足早に自宅へと歩みを進めた。
街にはビルやコンビニが立ち並び、どこもかしこも明かりに包まれている。
すれ違う若者は酒を片手に騒ぎ、視界の隅ではサラリーマンがふらつく上司に肩を貸している。
そんな街の様子には目もくれず、青年はただ真っ直ぐ歩いていた。
暫く歩くと、明かりは次第に少なくなり、道も細くなっていった。
青年は迷わず歩き続ける。
石造りの道を少し進むと、脇に階段があるところに辿り着く。階段は急で長く、うっかり落ちようものなら命が危ういと思われるものだった。
青年はその階段が嫌いだった。高所恐怖症の者にとって、このような階段は天敵である。
さっさと通り過ぎようと、足を速める。
階段の隣に差し掛かろうとしたその時、暗闇の中に二つの人影が見えた。
一つは青年と同じくらいの身長で、もう一つは彼よりも小さいように見える。青年は決して背が高い方ではなかったから、体格から考えて二人とも女性のようだった。
二つの影は、抱き合ってまるで一つになっているかのようだ。
こんなところで勘弁してくれと思わず口から出かけたが、構わず先へ進もうとした。公の場でイチャイチャするカップルなど山ほどいるのだから、いちいち相手になどしていられない。
二人の横を通り過ぎようとしたその時、影が大きく傾いたのが分かった。
突然、世界がスローモーションになる。
ゆっくりと、二人の体が下方に引っ張られていく。
鈍い思考の中で、助けなければならないと思った。
無意識に影の方に手が伸びる。
精一杯に腕を伸ばすと、柔らかい布に指先が触れた。
そのまま懸命に手を握る。捕まえたのは腕のようだった。
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