終わりの日まで、残り0日

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終わりの日まで、残り0日

 今日もいつものように、大学へと向かう準備をする。  ここ最近の相次ぐ嫌がらせのせいで、身も心もボロボロだった。肌は荒れ、部屋のあちらこちらに空き缶が散乱している。  家を空けることに内心で恐怖しながらも、単位のために仕方なく家を出た。  鍵がかかっているか念入りに確認すると、庭を通って外に出る。  ふと視界の隅に女性の頭が見えたが、反応できずにそのまま女性とぶつかった。 「すみませ…」  謝りかけたその瞬間、体に強烈な痛みが走った。 「…っが」  左上腕からビリビリとした痺れが伝わり、体が硬直する。まるで杭を打ち込まれたかのような痛みだった。  ぶつかった女は、動けない青年の体を無理矢理玄関へと引きずっていく。シャツが捲れて剥き出しになった背中を、地面が容赦なく擦る。  女はポケットの中を(まさぐ)ると、鍵を取り上げてドアを開けた。  青年は為す(すべ)なく家の中へと引きずり込まれていく。  身動きが全く取れず、抵抗すらできない。放心してされるがままの状況に、漠然とした恐怖が青年を支配していた。  何時間放置されただろうか。見慣れた自身の部屋で、青年は体を縛られて転がっていた。  最早恐怖さえも薄れてきていた。  この状態はあとどれくらい続くのか。半日か、それとも永遠か。  果てのない空虚は、彼の思考を鈍らせた。 「今の気分はどう?」  ぼんやりとして思考が停止しようかというその時、頭上から抑揚のない声が降ってきた。 「ん、んー」  質問に答えようにも、ガムテープで口を塞がれているので喋ることができない。せめてもの抵抗として、青年は無意味な音を発した。  そんな彼の姿を嘲笑うかのように、女は淡々と話を続ける。 「アタシのこと覚えてる?…って、覚えてるわけないか。あの時暗かったし。アタシ、あんたに助けてもらったんだよ。階段から落ちて」
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