終わりの日まで、残り15日

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 空いている手で階段の手すりを掴むと、勢いよく影を引き上げた。  その体は想像よりも軽く、持ち上げるのにさほど苦労はしなかった。  勢い余って青年の体が後方へと傾く。そのまま尻もちをついた直後、女の体が地面に打ち付けられた。 「…うっ」  女が呻き声を上げてから、数十秒の沈黙が続いた。二人とも何が起こったのか理解できず、思考を整理しているようだった。  暫くして、ようやく女が口を開いた。 「あの、何が起こったんでしょうか…」 「分かりません。でも、咄嗟に助けなくちゃって思って」 「そうですか…。ありがとう、ございました…」  女は上の空のまま頷くと、一礼して小走りに去っていってしまった。  青年もまた、救急車を呼ぶと早々にその場を後にした。
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