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空いている手で階段の手すりを掴むと、勢いよく影を引き上げた。
その体は想像よりも軽く、持ち上げるのにさほど苦労はしなかった。
勢い余って青年の体が後方へと傾く。そのまま尻もちをついた直後、女の体が地面に打ち付けられた。
「…うっ」
女が呻き声を上げてから、数十秒の沈黙が続いた。二人とも何が起こったのか理解できず、思考を整理しているようだった。
暫くして、ようやく女が口を開いた。
「あの、何が起こったんでしょうか…」
「分かりません。でも、咄嗟に助けなくちゃって思って」
「そうですか…。ありがとう、ございました…」
女は上の空のまま頷くと、一礼して小走りに去っていってしまった。
青年もまた、救急車を呼ぶと早々にその場を後にした。
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