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コトノハの国
昔、むかし。この国は『コトノハ』と言った。
小さな島国だが、勤勉で腕のいい職人肌の国民が多く、優れた品物を生み出すコトノハは、異国の国と堂々と肩を並べる。
神話が存在していた時代のこの国は、今では廃れたある儀式が行われていた。
100年に一度の春の日に、国をあげた儀式が行われる。
まず、国一番の舞姫が舞って神にお伺いを立て、神に気に入られれば舞台に設置された松明に火が灯り、王族が唱える祝詞でコトノハの守護女神キノクニ様が、天界からいらっしゃる。
王族の力でキノクニ様を覆い、舞姫に宿し奉る。
舞姫は悪鬼「濁り」と戦い、「払いの儀」で消滅させる。
「払いの儀」の儀式の後、キノクニ様は「昇天の儀」で舞姫から出て、天界へとお戻りになった。
この一連の儀式を「キノクニの舞」と呼ばれた。
「濁り」が消えると、大地は潤い作物が良く育つ。
取り仕切るはコトノハの国の王族たち。
王の名はキバ。名前に反して穏やかで、器が大きくやり手の王として諸外国から一目を置かれていた。
一人息子の王太子にも遺伝したのか、穏やかで聡明、見目も良し。
海を隔てた国々が、こぞってそんな王太子を望む。
王宮は異国の大輪の花でひしめき合っていたが、形式上だけの挨拶をするだけで花を選ばずにいた。
そんな王太子にキバ王は、「キノクニの舞」で祝詞を唱える大役を任せる。
コトノハの国の王族としての、自覚を持ってもらう意図でもあったのだが…
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