序章

1/1
前へ
/22ページ
次へ

序章

c25f4d49-6174-4526-bb74-1d9ef53cc54f四方を海に囲まれ、年中温暖で様々な花が咲くので有名なカイの国。 中でも「桜」は一際(ひよきわ)愛された落葉広葉樹。 春に必ず咲く白に近い薄いピンクの「桜色」の花は、 この国の人々を特別な気持ちにさせてくれる。 窓の向こうには、たくさんの桜が見事に咲き誇っていた。 「ばあちゃん。桜はなぜ春に咲くの?」 小さな手を膝に置いて、いつもの孫のおねだりが始まった。 ふふ、仕方ないねぇ。今日は桜の話をしようか。 昔、曾祖母さんから聞いたあの伝説… 風に揺れる桜色を見ながら、笑顔を孫に向けた。 「コトハ様が毎年春に、必ず咲かせてくださるからなのよ。 この国がまだ「コトノハ」という名前だった頃のお話をしようかね。」 「うん!」 キラキラ目を輝かせながら、元気に返事をかえす孫。 小さな椅子を持って来て、ちょこんと座る。 眼鏡をすっと掛け直し、膝にブランケットを掛け、古い記憶を頼りにお話が始まる。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加