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序章
四方を海に囲まれ、年中温暖で様々な花が咲くので有名なカイの国。
中でも「桜」は一際愛された落葉広葉樹。
春に必ず咲く白に近い薄いピンクの「桜色」の花は、
この国の人々を特別な気持ちにさせてくれる。
窓の向こうには、たくさんの桜が見事に咲き誇っていた。
「ばあちゃん。桜はなぜ春に咲くの?」
小さな手を膝に置いて、いつもの孫のおねだりが始まった。
ふふ、仕方ないねぇ。今日は桜の話をしようか。
昔、曾祖母さんから聞いたあの伝説…
風に揺れる桜色を見ながら、笑顔を孫に向けた。
「コトハ様が毎年春に、必ず咲かせてくださるからなのよ。
この国がまだ「コトノハ」という名前だった頃のお話をしようかね。」
「うん!」
キラキラ目を輝かせながら、元気に返事をかえす孫。
小さな椅子を持って来て、ちょこんと座る。
眼鏡をすっと掛け直し、膝にブランケットを掛け、古い記憶を頼りにお話が始まる。
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