第1話 願いのトビウオ

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第1話 願いのトビウオ

 高校に進学した僕は、中学と変わらず一人ぼっち。誰とも喋らない。  僕は無趣味で、面白い芸など出来ない。テレビを見る暇がないので、テレビの話題についていけない。運動神経は鈍い。勉強が凄く出来る訳でもない。僕にはクラスメイトと話すべき共通の話題など何も無いのだ。そんな僕に関わろうとするなら、それは物好きか暇人の類いだろう。  僕の日常には、家庭の事情があちこちに影を落としている。例えばスマホを持っていない。スマホがないからLINEが使えない。LINEを通じて友達とメッセージをやり取りすることが出来ない。うちの経済事情がゆえに、それはどうしようもないことの一つだ。  高校は、家から近い公立校というだけの理由で県立湯河原南高校を選んだ。授業料無料。歩いて行けるから定期代もかからない。名門校というほどではないけれど、一応、進学校。勉強は頑張った。  湯河原南高でも僕は、積極的に友達を作ろうとしなかった。相変わらずLINE断絶地帯だし、友達との話題づくりのための努力なんかするくらいなら、父ちゃんの仕事の手伝いをした方が儲かって嬉しい。
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