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小さなホールは、客席が全部見渡せた。
一人一人の表情が見える。
前の方にいる子どもたちも。
早く終わらせたかったはずの時間は、不思議なほどイヤではなかった。
終わらないでくれ、とさえ思った。
ああ、そうか。
私が全力で拒否して逃げようとしていた、この場所は。
私の原点なんだ。
真剣な眼差しが見える。
私は、どう応えたら良いのだろう。
あの子たちに。昔の自分に。
思考が途切れる。
無になる。
いつも、そうしていたように。
スローモーションみたいに流れる景色の中に、あの子がいた。
手拍子も忘れて、食い入るようにこっちを見てる。
大振りしちゃう、へたっぴだった小柄な女の子──。
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