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「春菜ちゃんが手を挙げてくれました!」
へたっぴだった小柄な女の子。
私と名前が一字違いの春菜ちゃんは、OGの一人に誘導されて舞台へ上がる。
ユカ先生から花束を預かった春菜ちゃんは、頬を上気させて私の前に立った。
シンプルなツインテールの髪に、あの赤い髪飾りを付けている。
付けまつげは片っぽ外れてしまったようだ。
私は、少し屈むようにして花束を受け取った。
私でも名前を知ってる花。チューリップの花束だった。
薄桃色のフィルムに包まれている。
会場が拍手で沸いた。
一つだけ、まだ開いていない蕾がある。
髪飾りと同じ赤──。
鮮やかな色たちが、胸をチクリと刺す。
でも、赤い蕾は春菜ちゃんみたいだと思った。
「ダンス、楽しい?」
拍手の中、春菜ちゃんへの言葉が自然と零れ出た。
話しかけられるとは思いもしなかったのだろう。
春菜ちゃんの細い肩が、ピョコンと跳ねる。
何か言いたげだが、なかなか言葉が出ないようだ。
春菜ちゃんは胸の前でギュッと両手を握り締めると、目を見開いた。
「私……ダンス続けたい! もっともっと、上手くなりたい……!」
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