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ひたすらに真っ直ぐな眼差しに、呼吸が止まる。
赤い髪飾りが、また滲んだ。
「そう……」
自然と口角が上がる。
私は、涙が落ちないように軽く頷いた。
春菜ちゃんは、嬉しそうに手を振って客席へ戻っていく。
ユカ先生が終わりの挨拶をして、緞帳が下りた。
控室へ続く舞台袖で足を止める。
応えるなら、ここしかないと思った。
「ユカ先生。私、決めました」
ユカ先生が振り向いた。
決意を口にしようと息を吸い込んだ時。
──アンコール!
──アンコール!
会場から、波のように熱が押し寄せてきた。
声が震える。
「先生、私……」
あの子たちと、ここでダンスをしたいです──。
涙と会場からの音で、声が掻き消される。
でも、ユカ先生は、初めから分かっていたみたいに微笑んだ。
「やってくれると思ってたわよ。春花ちゃんなら」
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