第1話 行き倒れの旅人

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「おー、今日も釣り人達がいるわねー」 砂浜や堤防にぽつぽつといる釣り人は島の外から来る人も多くて、私もたまにだけど、釣りをする。 腕の方は昔から微妙。 せっかちなのが魚に伝わって、よくないのかもしれない。 スーパーが近くなり、車どおりが多くなるので自転車から降りた。 「星名(せな)ちゃん、こんにちは」 「こんにちはー!」 「ワラビ、持っていくかね」 家の前で採ってきたばかりのワラビを揃えていたおばあちゃんが私の自転車のカゴにいれてくれた。 四月の終わりから五月は山で山菜がよく採れる。 「うわ、ありがとう!ワラビ、好きなんだよね」 「漬物でもいいし、煮物でもいいし、酢の物にしてもおいしいね」 「うちは味噌汁にもいれてる」 「それもありかね」 「ありだよ」 島で出会う人は知り合いばかりで帰る頃にはなにかしら自転車のカゴに入っていた。 スーパー浦西の入り口に自転車をとめて、中に入るとレジには同級生で親友の浦西(うらにし)倖代(ゆきよ)がいた。 「星名(せな)、おつかい?」 「この年齢でおつかいはやめてよ。買い出しと言って」 「ごめん、ごめん」 エプロンに三角巾をしている倖代はスーパーの跡取り娘だ。 島には他にスーパーがなくて、やめるにやめれない親を手伝っている。 「今度、みんなでバーベキューしようよ」 「またぁ?」 「うん」 「いいけど。やる時は早めに言ってよ。なにか作って持っていくから」 「はーい」 倖代は次のお客さんのカゴを見ながら、手を振った。 私達の島は小さくて、若い人達が少ないけど、みんな仲がいい。 月に何度か集まってバーベキューをしている。 飲む場所もないから、そうなっちゃうんだけどね……。 これといった飲み屋がないせいもあり、漁師の友達が家の前に七輪(しちりん)を持ち出して、魚を焼いて飲んでいる姿を目にしたり、どこかの家に集まって飲み会というパターンもよくある。 洗剤をレジ袋にいれると、スーパーを出た。
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