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「兄さんのカーナビをやっと調べることができた。あいつ、ガード固過ぎるんだって。どこに行ってたのかと思っていたら、こんな辺鄙な島だもんなー」
ジロジロと私を無遠慮に眺めると、目の前の派手な男の人は言った。
「俺は亜弦。朝日奈怜弥の弟だ」
「朝日奈さんの弟っ!?」
まったく似ていない。
私の反応を見て笑った。
「兄さんの母が死んで、俺の母が後妻で入って俺を産んだからあまり似てないかもね」
なるほど、どおりで。と思ったけれど、繊細そうな話だし、口には出さなかった。
「それじゃ、納得したなら案内してくれるかな?名前は?」
「高吉星名」
「星名ね」
ん!?待て待て!?
「ちょっと!いきなり呼び捨て!?絶対、私より年下でしょ!?」
「面倒だな。そっちも亜弦って呼べば?」
なんとなく腑に落ちなかったけど、むこうはもう『さん』付けする気はなさそうだった。
「……わかった」
「よし。じゃー、よろしく。星名」
朝日奈さんの弟の亜弦は軽い口調で言った。
弟さんなのはわかるけど、なにしにきたんだろう。
せっかく梅雨が明け、気持ちのいい天気なのに何故か私は嵐の予感がしてならなかった。
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