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二人のペースに完全に持ってかれている亜弦を救出するべく、猫を放つことにした。
カバンの中にあった猫のおやつの袋を『カサッ』とさせると猫達は耳をぴくっと動かして『にゃー!にゃー!』と力強い鳴き声でどこからともなく、集まってきた。
「囲まれた!?」
亜弦は見た目が派手なわりにビビりなのか、猫に囲まれて動揺していた。
そんな怯えなくても。
朝日奈さんはむしろ、囲まれて『至福』って顔をしてたのに。
「あらあら。エサの時間かしら」
「そうかも」
両親はこれは一大事とばかりに猫のエサいれにカリカリを入れてあげていた。
奴らは現金な物で、おやつの袋の音はすっかり忘れ、カリカリを美味しく頂いていた。
時々、こっちをちらりと見て『お前のおやつもいずれは……』と狙っているのがわかり、身の危険を感じた。
この場から離れた方がよさそうだと私は判断し、亜弦に言った。
「えーと、亜弦。二階の部屋に案内するわね」
「ああ……」
ちょっと戸惑い気味に亜弦は返事をして、後ろをついてきた。
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