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民宿の中に入ると、亜弦は『昔懐かしい家だな』と呟いていた。
「リフォームしてあるから、綺麗だよ」
「見ればわかる。汚いとは言ってないだろ」
言ってないけど、思ってそうだったから、つい口をついて出てしまった。
「俺は嫌いじゃないけど」
それなら、よかったと内心、ホッとした。
やっぱり気に入って欲しいし。
民宿『海風』は口コミサイトでもそんなに悪い評価はなくて、癒しとか、レトロとか、昭和っぽいとか―――そんな評判だ。
木製の窓枠にもこだわりがあるけど、一番は窓のガラスで模様ガラスを各部屋違うガラスを使っている。
「綺麗だな。模様ガラスに映る木の葉や景色が微妙違うのがいいな」
「わかるの!?お父さんのこだわりが!」
「まあな」
建築物に興味があるのか、亜弦は木や天井を興味深そうに眺めていた。
「柱も立派だな。国産の木材で今じゃ、なかなか手に入らない変わった柱もあるんだな」
「うん。亡くなったおじいちゃんが山でいいかんじの木を見つけてね。それを柱にしてあるの」
「山を持ってるのか」
「そんなに大きくはないけど、昔から木を植えたりして、木材調達用だったのかな。あんまりその辺は詳しくないんだけど」
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