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食事が終わると二人は別々の部屋に入っていった。
同じ部屋にするか聞いたけど、二人とも断固として拒否してきて、お父さんは『まあ、そうだろうな』と言って、他の部屋を用意してあげていた。
お母さんと一緒に夕飯の後片付けを終わらせ、お風呂に入ると麦茶を飲みながら、外を眺めた。
「はー、この一杯のために生きている」
ただの麦茶だけど。
そんなアホなことを言いながら、ぼっーとしていると、暗がりの中で猫を撫でている朝日奈さんを見つけた。
猫のおやつを手にサンダルを履いて、庭に出た。
梅雨が明けて、本格的な夏がやってきたせいか、ぬるい夜風が吹いていた。
「星名か」
私を見つけると、猫から視線を外して私を見た。
お風呂上がりのせいか、髪はサラサラでのぞいた鎖骨が色っぽい。
私より絶対に色気はあるね。
まちがいない。
「え、えーと。猫、好きですね」
邪な考えを悟られないように慌てて言った。
「可愛いからな」
「そうですよね」
朝日奈さんに近寄るとお風呂上がりで、石鹸の匂いがした。
香水の匂いがしたスーツの朝日奈さんより、石鹸の方がいい―――って私、何を考えて!
猫達がじっーと私を見ていた。
い、いや、私は別にね?そんなやらしいことを考えてないよ?
言い訳がましく、猫達に視線を送った。
けれど、猫達は私から視線を外さない。
「あ、もしかして」
手に持っていたおやつをあげるのさえ、忘れていた。
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