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「イザナギ!?イザナギ!ねぇっしっかりして!!」
「・・・・・・」
「イザナギ!!」
は・・・声も出ないか・・・落ちぶれたものだな、俺も・・・
「佐智!願って!俺と神様と一緒に帰るって!!俺は佐智が覚えててくれたからこうして消えないでいられた、だから、佐智、3人で帰るって願って!!」
・・・そうだ・・・願いだ・・・
思いの強さ、叶えたい思いを強く願う事・・・
願え、佐智。
・・・佐智を、目覚めさせる・・・
それが、俺に出来る最後の事だとしても。
ーーーーー
「どうしよう!どうしよう!皇明!2人とも起きないよ!!」
眠ったままの人間の娘の意識の中にイザナギが入り込んで2時間程が経過した。
深い意識の中は娘の思うようにどうとでもなるが、魂がすでに魔物に触れられ、いやそれ以上に喰われてしまっていたら、イザナギが連れ帰る事は出来ないかもしれない・・・。
何より、娘が現実のこの世界に戻りたいと願わなければ、戻る術はない。
魔に好かれる魂は、心やどこかに隙や闇を持つ魂だ。
魔が差す、隙に魔が入り込む、そういう魔に好かれてしまう心が魅入られ、喰われてしまうと戻る事はできない・・・。
「イザナミ、落ち着きなさい。2人が戻ってきた場合に備えてある。あとは待つしかない・・・」
皇明の胸を掴む私の手を大きくて冷たい手が握り返してくる。
「・・・冷たい・・・」
「え?手ですか?それは・・・仕方ないので・・・」
「・・・ごめんね、皇明・・・人間でいたかったあんたを・・・」
眠る人間の娘を前に、私の中に皇明と出会った日の事が蘇る。
しかし、それ以上の言葉を口にするのを皇明の手が遮り、
「俺は後悔していない。俺が今ここに在る事が出来るのは、あの日イザナミ、お前に救われたからだ。それはこの先も永遠に違える事のない誓約のはず。感謝こそすれ、謝罪を求めたりしていない。」
「・・・皇明・・・」
「・・・・・・待とう。2人が戻るのを。」
抱き締める皇明の腕の中で、願いを込め、私はキツく目を瞑った・・・
・・・戻る事が出来れば・・・・・・
・・・・・・戻ってくる事さえできれば・・・・・・
・・・・・・帰ってこい・・・イザナギ・・・・・・
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