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「佐智っ・・・それは・・・!」
もう、イザナミはいいんだ・・・
イザナミは今、幸せにしている。
俺がイザナミを探し出して謝罪をしたかったのも、自分勝手に罪を背負い、俺がそう感じていたにすぎない。
イザナミには過ぎ去った過去の出来事でしかなく、俺と再び共にありたいと思ってなどいなかったのだ。
「・・・イザナギの事・・・忘れたい・・・」
「さ・・・ち・・・いやだ・・・それは・・・っ・・・それは聞けぬ・・・!!」
「なんで?!だって、イザナミのとこに行っちゃうんでしょ?!好きになっちゃったのに・・・!俺の事好きになるな、なんて無駄にキメ顔で言う、最低な女誑しの神様、好きになっちゃったんだもん!忘れないと応援できない!!」
「・・・ほんと最低だな・・・神様・・・番がいるのに佐智にまで手ぇ出そうとしてんのかよ・・・可哀相・・・佐智・・・こんな奴いなくても俺が佐智とずっと一緒にいるよ・・・」
「・・・佳月・・・頼むからちょっと黙っててくれぬか・・・」
座り込んで抱き合い、泣きじゃくる佐智と、邪魔をするには都合がいいと考えた佳月が便乗して煽りまくる。
佐智がここまで思い詰めて追い込まれていたのは全て俺の責任だ。
俺の言動、己の気持ちすら誤魔化していたのに、手離したくなくて、佐智に人の子以上の感情が生まれていたのを隠しながら触れ、傍にいたから・・・。
「佐智、聞いてほしい。」
「・・・・・・・・・何を?」
「佐智・・・俺は、お主と共に帰りたい・・・だから迎えに来た・・・このような暗く寂しい場所ではなく、元の世界で、・・・・・・もう一度、俺を好きになってはくれぬか・・・?」
・・・情けない・・・無様だな・・・
また俺は肝心な所でカッコがつかない。
片目も塞がり、立っているだけで精一杯の俺は、佐智の前に膝を着き、気を抜けば意識を失いそうな状況だが、今を逃したら佐智を失う。
それに比べれば、万が一俺が神の力を失い自らが消える事になっても惜しくはなかった。
この人の子だけは、佐智だけは無事に帰してやらなければ、神としての名折れ・・・
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