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プロローグ
「あなたは、テニスが上手だからテニスをやっているのですか?」
中学一年の夏。テニス部の県大会の初戦を突破した僕が、木陰のベンチに座り休んでいると、見知らぬ他校の女子生徒が尋ねて来た。
背は小さく、弱々しくて、声をかけて来たのにその本人がおどおどとしている。僕は決して怖い容姿ではない。けれど、彼女からそう見えているのなら話しかけてこなければ良いのにと率直に思った。
僕は少し遅れて返答する。
「違うよ。テニスが好きだから上手くなった…」
「そ、そうなんですね…」
自分の胸の前で拳を強く握りしめた彼女は、何かを決意した目で僕に視線を向け頭を下げた。そして、駆け足で木陰の先に消えて行った…。
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