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  「これが彼とやり取りした最後の文章です」  校舎内北側に面する「名誉会」の牛革ソファに腰掛けた背筋のいい黒髪長髪の少女・阿佐美のノートを受け取る。越前(えちぜん)がそのノートをパラパラと物色する合間、その斜め後ろで話を聞いていた力丸(りきまる)は完全にドン引きして両腕をさすっていた。 「相手からレスポンスがあったのは二週間ほど前からです。移動教室の帰りに机に入れておいたノートを開くとこの文字が。初めは悪戯かと思い気に留めないつもりでいたんですが、どうにも気になってしまって。名前を書いて翌日ノートを見ると、別のページに返事が。  ご覧頂けている通り身元がわかりません。貴方方にはこのお相手をお探し頂きたいんです」 「最後の文章きもくないですか!? 越前みたいなこと言ってる」 「僕が気持ち悪いみたいに言うな」 「え? そう言ったんですけど今」 「彼なりのSOSなのかもしれません。名前を明かさない辺り、伝えることで不利な面があるとしたら。そして私にはこの殿方がとても悪い方には思えなくて」 「随分好意的だな。文通で他意でも芽生えたのか」 「そのノートからは抜いたのですが告解を受けました」 「えっ」 「…私に好意があると」  きゃ———、告白だって告白だって! と俄かに手のひらを返して片手を頬に添えばしばし肩を叩く力丸に越前が白眼を剥いてノートを机上に放り投げる。続いて自身の長くはない脚を放り投げてソファにふんぞり返った。 「実に目障りだ。力丸くんお引き取り願え」 「はあ!? なんで!」 「理由は簡単男と女のまぐわいなど僕は毛程も興味がない。相手の猟奇性やストーカー被害にまつわる事項であればそのまま案件として受理したが本件は我々の名誉挽回項目に値しない無価値であるとたった今みなした、いいか野ゴリラわかったらとっとと扉を開けてこの女をエスコートしろ」 「阿佐美さん!! 一緒にこの男の腕を引きちぎりましょう!! 私右手するんで貴女は左を」 「入学早々周囲から馴染めず圧倒的に浮いてしまったことで社会との逢瀬を目論んでいるとお聞きしました。この名誉会の札は越前 (はじめ)、貴方の浸透のために設置された〝生徒全員のための〟謂わば相談室であると。私は例外ですか」 「今この助手(ゴリラ)に説明した理由が全てだ二度は言わないわかったらその薄汚いノートを持って出ていきたまえ。例外はなしだ、きみが適用外(・・・)だったのみ」
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