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私の部屋とベンジャミン①
私の小さな部屋の窓際にベンジャミンを優しく置いた。
手のひらには、鉢の形がくっきりとついていた。
手の感覚を取り戻すため、グッパー、グッパーと握っては緩めて数回繰り返す。
手はじーんと重いのに、腕はずっしりとした重みから急に解放されたからか、いつもの半分くらいしかないような感覚だ。
一人暮らしの私の部屋は、廊下の左側にキッチン、右側に洗面台とお風呂がある。
部屋は7帖程度でベッドとソファとテレビ、小さなテーブルを置いたらいっぱいだ。
でも、必要なものが全て手に届くところにあるので、だだっ広い部屋にいるよりずっとこっちの方がいいと私は思っている。
強がりではなく……。
あと、この部屋の気に入っているところは、陽当たりと風通りがいいことだ。
この部屋に遊びに来た友人が皆そこを褒めるから、これは自他共に認めるこの部屋の素敵ポイントだと自負している。
(そこしか褒めるところがないとも言える)
私は窓を開けて、ベンジャミンの前にそっと座った。
ベンジャミンは窓から入る夜風で優しく揺れている。
月明かりが黒みかがった深緑の葉を照らしている。
私は立ち上がって部屋の照明を消し、再びベンジャミンの前に座った。
暗闇の中で月明かりに照らされながらユラユラ揺れるベンジャミン。
いつまでも、いつまでも見ていれそうだった。
光り輝きながらユラユラ揺れているベンジャミンの葉を見ていると、私自身が揺り籠の中で優しく揺らされているような気分になる。
私は目を閉じて、窓から入る心地い風を感じながら、ベンジャミンの葉が揺れる優しい音を聴き入っていた。
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