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私の部屋とベンジャミン②
朝、携帯電話のアラームの音で起こされ、私は必要最小限の力で、アラームを消した。
また5分後、その5分後、そのまた5分後にアラームをセットしているが、まだあと5分は寝れる。
そう思ったばかりなのに、すぐにアラームは鳴って、私は再び最小限の力でアラームを消す。
何度目かのアラームで私は諦めて体をゆっくり起こした。
ど近眼の私は、裸眼のままだと世界はぼんやりとしか見えない。
絨毯の白、ソファの赤と紺のチェック、そしてカーテンの緑がぼんやりと浮かんで見える。
「……!?」
窓際に背の高い男性が立っているように見え、私は急いで近くに置いていたメガネをかけて、窓際をじっと見た。
「あ、ベンジャミン……」
昨夜買ったベンジャミンのことを思い出し、私は胸を撫で下ろした。
ベッドから降りてカーテンを開けると、ベンジャミンに朝日が差し込んだ。
私は部屋を出て、キッチンでガラスのコップに水を入れ、ベンジャミンの鉢に水を流し込んだ。
土はゴクゴクと美味しそうに水を吸い込んでいく。
その様子を見ていると、水が凄く美味しそうに見え、自分が喉が渇いていたことに気づいた。
再び部屋を出て、キッチンで再びコップに水を入れて、今度は自分の体にゴクゴクと水を注いだ。
「ああ、これが水を飲むということだな」
と、ぼんやりと思った。
だが、平日の朝はぼんやりとしている時間なんてない。
私は顔をバシャバシャと洗って、コンタクトをスッと入れ、そのまま髪をとかし、急いで適当な服(2、3年前に買ったヘビーローテーションのスカートとそれに合う服)を着た。
下地とファンデーションを塗って、まつ毛だけはビューラーで何度もあげて透明のマスカラで形をキープし、眉毛をそれっぽく描いて、そのままの流れで鞄をバッと掴んで勢いよく外に出た。
外は思ったよりも日差しが強く、私は目を細めた。
鍵を閉める前に、なんとなく扉を開けて、開けっぱなしの部屋のドアの向こうのベンジャミンを遠くから覗いた。
ベンジャミンは朝日を全身に受けて、ゆっくりと呼吸しているようだった。
私は深呼吸をして、
「行ってきます、ベンジャミン」
と心の中でつぶやき、玄関を閉めた。
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