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「この公園広いね」
「そうだねー実家からは少し離れてる所だからここら辺来なかったけど中々いい所多いよね!」
「やっぱり親とか連絡した方がいいかな…」
「私一応有里のお母さんに連絡したけどやっぱり一緒に暮らす事にしたのを怒ってた、だから病院にもお見舞い来なくて」
「そうなんだ…ありがとう、余計な事言われたよねきっと」
どんな両親か覚えていない、それでも喧嘩でお見舞いにも来ないのはよっぽどだろう。きっと雫にもきつく当たったはず。
雫は下を向きながら小石を足で突いていた。
「有里はさ、優しいよね」
「そうかな、記憶無くなる前の自分は分からないけど今の私はきっと優しくないよ」
そう言うと雫は顔を上げ私に悲しそうに微笑んだ、その微笑みの意味は私には分からなかった。
「ずっと優しいよ有里は、記憶無くなる前も今もずっと優しい」
雫は私を見ているはずなのにどこか私を見てないようなそんな気がした、何も言えない私に雫は「家あと少しだから歩いていこうか」と話しかける、ただ頷く事しか出来なかった。
バスから降りて徒歩10分その間にも小さなスーパーや小さな喫茶店、住宅などで隙間なく町が広がっている。
「そこのアパートだよ」
雫は静かにそう言い3階建てのアパートを指さした。
そこまで古びた様子はないけれどどこか年季を感じる、そんなアパートだった。
「ここの202号室」
アパートの玄関を開きポストを確認した雫は階段を歩く、コンコンと雫の靴の音がコンクリートに響いてどこか緊張する。
そんな私を置いて雫は鍵を取り出し202と書かれた部屋の鍵を開ける。玄関を開くと雫の香りがした。
「家やっと着いたー病院遠いんだから」
靴を脱ぎそのまま真っ直ぐ進んだ所かリビングだった。そのリビングで二人がけが出来るような柔らかそうな座椅子が置かれていて雫はそこにどさっと崩れ落ちた。
「部屋こんな感じなんだね」
「そうだねールームウェア初めてだから普通とか分かんないけど引っ越して間もないから上手くやれてるよ」
「そっか、ここがトイレ…トイレ玄関から近くない?」
「ははっやっぱそれ思うよねー私も最初思った、まぁ2人ならそんな問題ないでしょ」
雫は体をソファに預けてこちらを見ている。
どこかここで暮らしていた感じがしない、でもそれは記憶を無くしたせいなのかと思った。
家の中を見終えた私は雫の横に座る、雫の体温がとても心地よかった。
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