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「滉さぁ、初対面の時と態度違い過ぎるのなんで?」
滉とその向かいに胡座をかいた俺とを隔てる新品の参考書や手垢のつきまくったノートの束をテーブル下へと移動させ、パーソナルスペースギリギリまで滉の顔に近づいてみる。
滉は強い眼差しのまま俺の顔をグシャッと掴んで
「失望したから!」
短い言葉と共に強く押した。
「って!」
ガキの見た目だから失念してたが、滉はこう見えて筋肉質な男で腕力も相当あるんだった。
滉の指が当たってた俺の顔の部位がジリジリ痛む。
「近付き過ぎなんだよ気持ち悪い。」
「あー、それは悪かった。」
だいぶ前にジュン先輩から「サシで話す時に効果的な距離感を掴む方法」として教えてもらったやり方を試してみたのだが、なんか間違えたのかもしれない。
「なんでなつこはこんな男がいいんだよ。意味分かんねぇ。」
まだ痛む顔を押さえている俺に滉はそう小声で呟いたから、俺もそれに乗っかろうとこんな言葉をかけてみた。
「確かに俺もそう思うよ。普通に考えたら何もしてこない一回り歳上の俺なんか即切り捨てて、ちょっかい男を助けた同い年の滉に惚れちゃうよねぇ?」
方法は悪いが、こっちも挑発してやる。
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