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滉の言葉は、どれも事実だ。
事実だからこそ、抉られまくった俺の心を……傷ついた自分の心につい手を当ててしまった。
「は?俺が責めたら今度は自衛か?努力も何もしてない中途半端なおっさんの癖にこの期に及んで汚い言い訳でもするつもりかよ。」
本当に汚いものを見るような目で睨んできた滉に、俺は自分の出来得る限りの真剣な表情で見つめ返した。
「言い訳と思ってくれてもいい。今から俺が話す事は夏実や茉莉にバラしたっていい。……でもその代わり俺が自分の気持ちに正直になった時点で、俺と夏実は『終わる』と思っている。」
追うものと追われるもの。
「追うもの」が、実はずっと最初から「追われるもの」で尚且つずっと勝者であると気付いた場合……その関係はどうなってしまうだろうか?
ーーー
『私と湊人の場合だと私の方が先に好きになったから湊人を王子様と思うのは固定で揺るがないの』
ーーー
憧憬を抱く俺の背中は単なる幻だと知ったら、王子様だと思っていた幼い少女の恋心は滉みたいに失望するんじゃないだろうか。
「負け続けているのは夏実じゃない、俺の方だ。
俺は夏実が8歳になるずっと前から……彼女の事が好きだったんだから。」
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