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「実際赤ん坊の頃から夏実の世話を手伝っていた俺は、不思議な存在だったんだと思う。兄貴よりも年上だし背も高いし、実の父親は当時単身赴任していて家に居なかったから。幼子からしてみたら消去法でパパだと判断したんだろう。」
「否定しろよ、そこは。」
「したよ。その場に居た全員で。……でもやっぱり隣人という事実を呑み込むにはまだ幼いし、百歩譲って一番上の兄貴と思うにしても納得いかなかったんだろうなぁ。2歳児特有のイヤイヤをしながらどうしても俺がパパだと譲らなかったんだ。」
夏実は晴美さんや菜央ちゃんのように自分の意見を曲げずに主張する事が滅多にないのだが、あの時ばかりはとてつもなく頑固だったと振り返る。
「おっさん中2なのに嫌がるだろフツー。それがなんで『好き』に繋がるんだ?」
「フツーはそうなんだろうな。でも俺にとって手足をばたつかせイヤイヤしながら言い張る夏実がめちゃくちゃ可愛いって思ったんだ。
……同時に、夏実の実の父親に勝った!やった!という変な感情や、こんな可愛い夏実を本当の意味で手に入れたいっていう気味の悪い欲望みたいなものが生まれたかな。」
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