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「なんだそれ。引くんだけど。」
「だろ?……だから『好き』に気付いてすぐに蓋をしたんだよ自分の気持ちに。
それでも日に日に感情が昂ぶってその蓋を開けてしまいそうになるから、『好き』を『可愛い』に変換する事にした。」
可愛いという言葉は実に便利で、言う側の人間を選ばない。
「好き」はダメでも、「可愛い」なら許されるんだ。
「2歳や3歳ってさ、実の親でも手を焼く時期なんだ。特に2歳は言葉がおぼつかなくて自分のしたい事を伝えたくても伝えられない。……かといって子どもの側から離れずにしたい事や欲しいものを先に汲み取ってしまうと発育の妨げになってしまう。誰しも疲弊するんだよ。」
「……おっさんは疲弊しなかったんだ?」
「そう。夏実の言動の一つ一つが可愛くて可愛くてたまらなかった。『好き』が止まらなくてあの時期はほぼ『夏実は可愛い』しか言ってなかった気がする。」
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