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「おっさん、気持ち悪い上に最低な事してんな。疑似恋愛とか。」
「勿論当時は本気で相手に誠実に接しようと試みた。夏実への気持ちを断ち切って新しく恋を始めて……性愛を同年代の相手に向けようとした。だからその行動が擬似だと自覚したのはだいぶ後になってからだな。」
「それでも汚ねぇよ。」
「その通りだ、俺は汚い。……なのに夏実にはそんな経験して欲しくないと清廉であって欲しいと、男の醜い感情が渦巻いてしまうんだ。どうしようもない中年男だよ、俺は。」
俺の話を聞く滉の口からは罵りの言葉ばかりが飛び出すが、嫌悪を込めた表情ではなくなってきている。
「茉莉とあっちのテーブルで自習してた時、勉強教える為に字を綺麗に矯正したとか、苦手科目を予習したとか話してただろ?」
それを証拠に、小声で茉莉と会話していた内容の事を持ち出してきた。
「聴こえてたんだ?小声で喋ってたつもりだったのに。」
「聴くよ!大好きな茉莉がムカつくおっさんとコソコソ話す内容だぞ?!気にならないわけがないし!」
そしてムキになって俺にそう言う滉はチビガキらしくて微笑ましい。
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