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「夏実が小学生になったから宿題を見てやってほしいと、夏実の母親から依頼されたんだ。家庭教師の真似事とはいえ、夏実から『字が汚い』と思われるのは嫌だったからな。それに俺が教えた事をよく聞いて吸収してくれたから、そんな夏実を純粋に可愛いと思って忙しくしてても時間を作ってた。」
「でもその頃もしてたんだろ?疑似恋愛。」
「してたよ。」
「じゃあ『純粋に可愛い』ってなんなんだよ?『純粋に好き』って意味か?」
「うーん……。それはどうだったか覚えてないけど、少なくとも性愛ではない事は確か。」
「なんだそりゃ。キモっ!!」
「俺が夏実を好きでいる事は常に負けだ。夏実はどう思っていたのか分からないが俺が夏実を追いかけようとする距離は日に日に遠く離れていくように感じている。」
3歳の夏実を公園で遊ばせる時、俺はベンチに座ってその様子を遠くから見ていた。周囲からそれが異常性愛だと思われないように高校受験用のテキストを片手にして。
……テキストに顔を向けつつ、夏の日差しに照らされた幼い夏実の動きを視界の端に寄せておき少しでもそれが視界から消えればすぐ夏実を追いかけて捕まえる。
15歳が3歳を物理的に捕まえるのは、そのくらい容易な事だった。
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