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ここ数日で俺は滉に対して様々な感情を抱いてみたが、最終的には敵わないと判断したからだ。
本当に……なんで中2の夏実は俺を追いかけるなどという幻想から抜け出し、イケメン的なこいつの手を掴まなかったのだろうか?不思議でならない。
目の前にいるイケメンな彼は、フーッと細く長い息を吐いて
「なつこにも茉莉にもバラさないから。」
と俺に言った。
「なんで?」
と単純な疑問を投げかける俺に
「なつこが可哀想だから。」
と滉は答える。
「俺に王子の夢や幻想を抱く方が可哀想だと思わないのか?」
「おっさんの話を聞いたのが3年くらい前なら絶対喋る。……でも今なつこに恋愛感情を持ってない俺が正義を振りかざしたところで、された方の人間を救えないから。無意味じゃん。」
どうやら滉は、「夏実を可哀想な気持ちにさせたくない」という思いが常に先行するのだろう。
「滉は真のイケメンじゃないか」と、チビガキの見た目に反するそのギャップに屈服した。
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