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「百音のこと、おふたりがものすごく大切に丁寧に育ててくださったんだろうなって、毎日思います。
その愛情を僕がだめにしないように、責任持って彼女を大切にしたいです」
タキシードの亜門さんがひんやりした美貌を緩めて、ママとパパに頭を下げた。
それから、アイちゃんがテーブルに来て、生亜門さんの格好良さにびっくりしていた。写真では見せたことあったけど、本物は初めてだったから。
たしかに、大学では、亜門さんみたいな極上に美しい人はそうそういない。ていうか見たことない。
わたしは大学を卒業してすぐ結婚ということで、まわりの友だちのなかで一番乗り。
そのせいもあってか、友だちはみんな〝憧れの結婚式〟と言ってくれたので、いっぱい亜門さんと準備した甲斐があったなと満足した。
会場は、フレンチのお城。
フランスの古城を思わせる優雅な会場は、飾られた絵画や花瓶は西洋美術館のようだし、シャンパンゴールドのカーテンが煌めいている。
そう、わたしたちが初めてデートをした場所だ。
ふと、そのときのくすぐったい会話を思い出した。
当時の彼のせりふをなぞるように、わたしはとなりの新郎に訊ねる。
「亜門さん、わたし、お姫さまになれてますか?」
すると彼は長い睫毛を伏せて、その奥にある黒い瞳で静かにわたしを見据えた。
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