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「えっと、百音ちゃんは若くて可愛いし、俺みたいなおっさんと会っても楽しくないんじゃないかな?」
おっと、これは、遠回しに断られている。
わかっているけど、こちらにも引き下がれない事情があるのだ。
このチャンスを逃したら、永久に続くお見合い地獄。
おそらく、堂前さんを超えるひとには出会えない。わたしは世界にじぶんの理想を叶えてくれるスーパー王子が存在すると知ったうえで、ランクを落とした人とデートに行かねばならなくなる。
そんなのって、虚しすぎるでしょ。
だから、わたしは食い下がるしかないわけで。
「わたし、堂前さんとデートしたいです!」
「いや、うーん、たぶん、これからもっと良い人に出会えるとおもうよ?」
「いいえ、堂前さんがいいです。堂前さんは、わたしの理想と運命の王子様です」
「これは、まいったな」
整った形の眉根を寄せて、困ったように笑う堂前さん。そんな表情もすてきなので、わたしはやっぱり、なんとしてでも次に繋げておきたかった。
全力の祈りを込めて両手を合わせて、上目遣いに熱視線を送る。
「はは、百音ちゃん、そんな可愛い目で見ないでよ」
「こんなかわいいのに、デートはだめなんですか?」
「うーん、そうだねえ」
「どうしても?どうしても、だめ?」
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