逢魔時のせいだとして

4/24
前へ
/114ページ
次へ
「えっと、百音ちゃんは若くて可愛いし、俺みたいなおっさんと会っても楽しくないんじゃないかな?」 おっと、これは、遠回しに断られている。 わかっているけど、こちらにも引き下がれない事情があるのだ。 このチャンスを逃したら、永久に続くお見合い地獄。 おそらく、堂前さんを超えるひとには出会えない。わたしは世界にじぶんの理想を叶えてくれるスーパー王子が存在すると知ったうえで、ランクを落とした人とデートに行かねばならなくなる。 そんなのって、虚しすぎるでしょ。 だから、わたしは食い下がるしかないわけで。 「わたし、堂前さんとデートしたいです!」 「いや、うーん、たぶん、これからもっと良い人に出会えるとおもうよ?」 「いいえ、堂前さんがいいです。堂前さんは、わたしの理想と運命の王子様です」 「これは、まいったな」 整った形の眉根を寄せて、困ったように笑う堂前さん。そんな表情もすてきなので、わたしはやっぱり、なんとしてでも次に繋げておきたかった。 全力の祈りを込めて両手を合わせて、上目遣いに熱視線を送る。 「はは、百音ちゃん、そんな可愛い目で見ないでよ」 「こんなかわいいのに、デートはだめなんですか?」 「うーん、そうだねえ」 「どうしても?どうしても、だめ?」
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

508人が本棚に入れています
本棚に追加