黄昏時に憂う

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鼻で呼吸もできるようになって、もう、下手なんて言われないくらいにまで成長してる。 そのくちびるの柔らかさと湿度と温度を知っているのは、数え切れないほど触れたおかげだ。 整った顔が離れてすぐ、わたしは彼の名前を呼んだ。 「亜門さん」 キスの水音が静まったリビングで、わたしの声が意外にも響く。亜門さんは感情の読めない無表情でこちらを見据えたまま、何も返さずに続きを待っていた。 「きちんと、距離を保ちましょうか」 悪魔の瞳が凍りつく瞬間を、わたしは見た。  
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