511人が本棚に入れています
本棚に追加
鼻で呼吸もできるようになって、もう、下手なんて言われないくらいにまで成長してる。
そのくちびるの柔らかさと湿度と温度を知っているのは、数え切れないほど触れたおかげだ。
整った顔が離れてすぐ、わたしは彼の名前を呼んだ。
「亜門さん」
キスの水音が静まったリビングで、わたしの声が意外にも響く。亜門さんは感情の読めない無表情でこちらを見据えたまま、何も返さずに続きを待っていた。
「きちんと、距離を保ちましょうか」
悪魔の瞳が凍りつく瞬間を、わたしは見た。
最初のコメントを投稿しよう!