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転校生1
「転校生を紹介する。藤堂くん、此方へ」
肩の辺りまで伸びた茶髪、線の細い体。だが、背筋をピンと伸ばし、凛とした態度の美青年が教室に入って来た。
一瞬男ばかりの教室の中がどよめく。
「藤堂 光です。よろしくお願いします」
【藤堂……光?】
その名を聞いて1番後ろの窓際に座ってグラウンドを眺めていた大悟がその青年に目を向けた。
「皆仲良くするように。では藤堂くんはあそこの空いた席に」
「はい」
【まさか……な。あんなナヨナヨした奴知らねぇ。同姓同名か何か……だろ?】
大悟がじーっと見ていると光がその視線に気がついた。そして大悟を遠慮なく真っ直ぐ見る。
長い睫毛に切れ長の綺麗な瞳ーーー
いきなりドクンっと大悟の胸が音を立てた。
【な、何だ?ドクンって】
大悟の顔がほんのり赤くなった。
光は馬鹿にしたようにクスッと笑い大悟の斜め前の席に座る。
大悟はチッと舌打ちをした。
【女みたいな顔しやがって。男ならもっと男らしくしろってんだ】
再び大悟が窓の外のグラウンドに目を向けていると机の上に何かが飛んできた。
【……何だ?】
細く折られ結ばれた紙。こんなものを今までもらった事のない大悟は辺りをチラチラと見渡す。
誰もこっちを見ていない。
【俺様宛か?間違いじゃないのか?】
とりあえず結ばれた紙を解いて何気に開いてみた。
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泣き虫大悟、おねしょはもう治ったのか?
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大悟は真っ赤になり、思わずガタガタガタッと音を立てて立ち上がるとクラス全員が大悟を振り返った。
大悟は光を見る。
光は頬杖をついて大悟にまた馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「き、桐原くん。どうかしましたか?」
怯えたように先生が声を掛けてきた。
「い……いや、何でもねぇ。悪ぃ」
そう言って席に座る。
ホッとした空気が流れ、再び授業が再開された。
【……アイツ。あの"藤堂 光"なのか?】
もう一度斜め後ろから光をよく見る。
上品そうな顔にやはり非力そうな体。
【……信じられねぇ】
大悟は動揺しつつ、紙をギュッと握りしめた。すると光が振り返ってポイッとまた紙を投げてきた。
【チッ、何だよ】
再び紙を解いて開く。
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放課後裏庭。必ず来い
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【……命令口調かよ】
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