安らぎ3

1/1
前へ
/131ページ
次へ

安らぎ3

「言うねぇ、大悟くん。でも大丈夫。今朝も良質なタンパク質摂取したしい?」 大悟はブーっと味噌汁を噴き出す。 「ちょっと、もうやだぁ」と、母親が布巾を持って来る。 「光、てめぇもう許さねぇ、表へ出ろぃっ」 「良質なタンパク質?」 父親がうーんと考えている。 【父ちゃんもそこ深く考えるとこじゃねぇだろっ】 「サプリメントですよ、おじさん。ほら、コンビニとか薬局とかに置いてあるでしょ?」 「なるほど、そう言う事か」 機転のいい光のお陰で納得する父親に大悟はホッとする。光はと言うとウインクしてダイニングから出て行った。 「あの馬鹿」 【もしあんな事俺達がしてるって親が気付いたら、もう一緒にここには居られなくなるんだぞ?】 「あれ?一緒に居られなくなる?って……」 【俺、アイツと一緒に居たいと思ってんのか?】 ____________ 「今日、雨だから体育、体育館でバスケだってよ」 「バスケー?」 ザワザワと教室で体操着に着替える。 光がシャツのボタンを外しているとふと視線を感じた。チラッとそっちの方を見てみるが誰もこちらを見ていない。 【気のせいか……】 そう思いながらシャツを脱いだ瞬間ーーー ティロリン カシャッ といろんな携帯写真を撮る音が数カ所から聞こえる。 【え……?】 光が体操着で前を隠して振り返ると皆素知らぬ顔。 「ねぇ、大悟……」 話しかけようにも既に大悟は着替え終えたのか居なかった。光は不審に思いながら体操着を着用する。 体育館に向かうと授業が始まるまでバスケのボールで皆遊んでいた。 「大悟は……と」 光がキョロキョロ見渡していると「桐原パスッ」と言う声が聞こえた。そちらを見るとパスを受けた大悟が丁度ダンクシュートを決めるところだった。 ザッとボールを決め込むとゴールにぶら下がり床に降りる。 「わぁ、流石桐原。タッパあるからさまになってかっちょえぇー」 「何でアイツバスケ部に入んねぇんだ?」 クラス全員、大悟を見る。 【大悟……かっこいい】 フフッと微笑む光の表情が一転して強ばった。何故かというとドリブルをする大悟の向こうに大熊が居た。 ゲームを楽しむ大悟だけをずっと目で追っている。時に笑ったり時に……視姦するように。 ふと大熊が光の視線に気がつきニヤリと笑った。 挑戦的な瞳ーーー そして再び大悟に目を向ける。 その目はまるで鹿を襲う前のライオンのようだった。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

95人が本棚に入れています
本棚に追加