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安らぎ3
「言うねぇ、大悟くん。でも大丈夫。今朝も良質なタンパク質摂取したしい?」
大悟はブーっと味噌汁を噴き出す。
「ちょっと、もうやだぁ」と、母親が布巾を持って来る。
「光、てめぇもう許さねぇ、表へ出ろぃっ」
「良質なタンパク質?」
父親がうーんと考えている。
【父ちゃんもそこ深く考えるとこじゃねぇだろっ】
「サプリメントですよ、おじさん。ほら、コンビニとか薬局とかに置いてあるでしょ?」
「なるほど、そう言う事か」
機転のいい光のお陰で納得する父親に大悟はホッとする。光はと言うとウインクしてダイニングから出て行った。
「あの馬鹿」
【もしあんな事俺達がしてるって親が気付いたら、もう一緒にここには居られなくなるんだぞ?】
「あれ?一緒に居られなくなる?って……」
【俺、アイツと一緒に居たいと思ってんのか?】
____________
「今日、雨だから体育、体育館でバスケだってよ」
「バスケー?」
ザワザワと教室で体操着に着替える。
光がシャツのボタンを外しているとふと視線を感じた。チラッとそっちの方を見てみるが誰もこちらを見ていない。
【気のせいか……】
そう思いながらシャツを脱いだ瞬間ーーー
ティロリン カシャッ といろんな携帯写真を撮る音が数カ所から聞こえる。
【え……?】
光が体操着で前を隠して振り返ると皆素知らぬ顔。
「ねぇ、大悟……」
話しかけようにも既に大悟は着替え終えたのか居なかった。光は不審に思いながら体操着を着用する。
体育館に向かうと授業が始まるまでバスケのボールで皆遊んでいた。
「大悟は……と」
光がキョロキョロ見渡していると「桐原パスッ」と言う声が聞こえた。そちらを見るとパスを受けた大悟が丁度ダンクシュートを決めるところだった。
ザッとボールを決め込むとゴールにぶら下がり床に降りる。
「わぁ、流石桐原。タッパあるからさまになってかっちょえぇー」
「何でアイツバスケ部に入んねぇんだ?」
クラス全員、大悟を見る。
【大悟……かっこいい】
フフッと微笑む光の表情が一転して強ばった。何故かというとドリブルをする大悟の向こうに大熊が居た。
ゲームを楽しむ大悟だけをずっと目で追っている。時に笑ったり時に……視姦するように。
ふと大熊が光の視線に気がつきニヤリと笑った。
挑戦的な瞳ーーー
そして再び大悟に目を向ける。
その目はまるで鹿を襲う前のライオンのようだった。
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