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「逃げるなよ。壮大な計画の尻拭きは、粛々と行ってもらうぞ」
騎士が重心を落とす。いかなる攻撃にも対応できるよう、わずかに剣先を上げて右にずらす。
片腕の魔女は構えすらない。ただ、垂れる左腕と共に立っていた。
けれど、首から掛けたペンダントの輝きが弱まることはない。
暫しのにらみ合いの末――残像が映るほどの速度でエイブラハムの剣先がホーリーホックの首へと滑る。
魔女は半身でそれを躱し、右手の集積された魔力はぶつけるだけで炸裂する爆弾と化していた。ウィリアムのように体内に膨大な魔力を貯蔵している場合は幾分かの防御が可能でも、魔法の耐性がない騎士であれば、一撃で爆殺できる威力がある。
がら空きとなったエイブラハムの胴を狙うホーリーホックの右の拳は、――最小の動きで軌道を変えた刃により阻まれた。
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