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斬りつけた刃は、甲高い金属音をあげて中程から折れた。まるで鋼鉄に力任せに打ち付けたかのように芯の部分から破損する。
予想以上の出来事に騎士が距離を取る。
本来の太刀筋なら、振り下ろした刃を返し相手の足の腱を切り落とし、崩れたところで追撃の刺突か首を刎ねるが、魔女の背からは出血すらなく、剣のほうが打ち負ける結果となった。
「思った以上に硬いな。名剣の一振りがこのざまとは」
「ちっ・・・・・・。白騎士とは違ったバケモノめ・・・・・・」
エイブラハム側から距離をとったことはホーリーホックにとっては僥倖だった。
魔女の仕組んだ最後の手段だけはまだ使いたくない。後数回打ち合えば種が割れることは明白であり、計画の最後で頓挫することは許されない。
一撃の爆殺を目論んだ拳ですら致命傷にならない圧倒的な防御性能を誇る白騎士ウィリアムに対し、洗練された精密かつ速く重さのある剣戟を放つ黒騎士エイブラハム。騎士の双璧の脅威は、『瞬獄』のホムラの比ではない。
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