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「――おい、エイブ。横取りは許さねぇぜ。こいつはオレのだ」
爆発の影響で上半身があらわになったウィリアムが近づく。
筋骨隆々の黒い肌。女の胴回りほどある太い腕。そして、ファブニールやホーリーホックの攻撃を受けても、ダメージが微塵も見られない。
「そういう競争心は捨てろ、ウィリアム。これは有事だ。事態の収束こそが最大の優先事項だぞ。だいたいお前は――」
「説教すんな。いいからお前はあのトカゲでも殺してこい」
「やれやれ・・・・・・。いつになったら大人になるんだ、お前は」
踵を返す黒騎士。竜殺しがファブニールに向かおうとしている。そうなれば、魔女の計画は確実に破綻する。それだけはあってはならない。
「行かせる――」
「行かせるんだよ。オレのマントを燃やしたんだ。付き合ってもらうぜ、お嬢ちゃん」
魔女の前に立ちはだかる黒い壁。黒肌の巨躯が腕を広げる。その違和感に、思わずホーリーホックの足が止まった。
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