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路地裏に止めた原付のシートに座りタバコを吹かしながら、いつものように空を見上げる。
屋根と屋根の隙間から見える細い空は、いつもと変わらず曇っている。
ここから晴れた空を見上げた記憶がない。
俺は冬の尖った大気をタバコの煙と一緒に大きく吸い込む。
そしてその曇った空に向かって吐き出す。
溜まった疲れを取るように両足を伸ばすと、全粒粉で真っ白になったスニーカーが視線に入った。
ちっ…。
俺はそのスニーカーの粉を手で払ったが、小麦粉が入り込み、白くなった表面は変わらなかった。
咥えタバコでカーゴパンツのポケットから携帯灰皿を取り出そうとしていると、店の裏口のドアが開いた。
「ここに居たか」
そう言って缶コーヒーを片手に神崎さんが出てきた。
そして俺の横に来てしゃがんだ。
「まだタバコ吸ってるのか」
神崎さんは俺を見上げる様に見て言う。
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