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もう、事後報告で、いいや。
そんな諦めを抱えて、アームカバーも抱えて、出勤。
社会人になって何年も何年も経ちますが、上司に報告する、という行為が苦手です。
タイミングを逃しまくり、出勤から約2時間後。
ふみさんの車椅子を押す上司の姿を見つけ、チャンスとばかりに駆け寄る、わたくし。余談ですが、介護現場では走ってはいけません。
「これ、よかったら、ご利用者様用に使って下さい! ふみさんとか」
ふみさんに限定せず、アームカバーの使うあてを上司に委ねます。でも、上司はふみさんに使ってくれました。
可愛い!と上司はテンション高く、ふみさんの手にアームカバーを着けてくれました。
ふみさん本人は、車椅子に座って熟睡しています。認知症に因り、2日間起きて2日間眠る、というサイクルを続けているのです。私が夜勤のときの出血騒ぎの日は、夜通し起きる日だったのです。
ふみさんが目を覚ましたとき、私はふみさんに自慢してしまいました。
「これ、私が編んだんです」
ふみさんは、つぶらな瞳をぱちくりさせ、ふくふくしたほっぺたを綻ばせました。
「しゅごいね! ありがとね」
それから、ふみさん。アームカバーを外して満足そうに抱きかかえてしまいました。
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