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「廓の恋は地獄」
これは姉さん達が何度も涙を流しながら私に伝えた教えだった。
間夫(情夫)を作ってお金を騙し取られた姉さん。
男を取り合って刺された二人の姉さん。
廓の男との恋はご法度なのに料理番と恋に堕ちて、逢引きしているのがバレた姉さん。折檻により、男の方は腕が動かなくなって、姉さんは下の見世に鞍替えになってしまった。
初恋なんて忘れた方が利口だ。
だって、今晩から私は売られるのだから。
私は声が出ないように着物の裾を噛んで声を押し殺して泣いた。
「かおくん」と呼んでいたあの頃に戻りたい。
でも、もう今夜からはその思いに別れを告げなければならない。
遊女と楼主の息子。
無垢ではなくなった女と次期亡八。
叶わない恋。
あと数刻で地獄の門が開く。
それまで私に出来る事は、一人泣く事だった。
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