謎切れ

3/3
前へ
/551ページ
次へ
 勝ってもないのに勝ち誇る、すましてる場合じゃないのにすます。これらは夫の悪癖だ。  私が店長に、「まったく反省してないようなので、警察に通報……」  ドンッ ! !  夫は拳で机を叩き、 「卑怯だぞ!」  想像の斜め上を行く万引き犯の言動に一瞬面食らった店長。  だがすぐに正常な判断力を取り戻し、デスクの固定電話の受話器を持ち上げた。  夫は通報させまいと受話器を奪い取ろうとする。二人による受話器争奪戦が始まった。  そんな事をしなくても電話機のフックを指で押せば良いだけのことなのだが、(せん)(ぱく)な夫にはわからない。  だがすぐに、夫は剛力さんによって取り押さえられた。  夫は『北斗の拳』の雑魚(ざこ)キャラのようなちびマッチョだが、剛力さんはラオウのように大柄で屈強なのだ。  ところが逆切れした夫はわめき散らす。 「さっきは『勘弁する』って言っただろうが! この嘘つきめ! 嘘つきは泥棒の始まりだぞ! お前は泥棒だ! 泥棒! この泥棒!」  夫はなぜか店長を泥棒呼ばわりしたのである。泥棒の分際で。盗っ人猛々しいとはこの事か。
/551ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加