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◆◇◆
その後、俺たちは魔王討伐の募集に応募し、とあるパーティーに2人で参加した。
若い剣士と、勝ち気な女性ヒーラー。アルフレッドは弓兵兼魔法士で、俺は魔法士特化だった。
そうして長く旅をした俺たちは強くなって無事、魔王を封印し直すことができた。
その過程で、俺はアルフレッドと恋人になって、死線を越えてよりその絆を強くしていった。
養父の最後も見届けた。大切な娘をあの人は結局手にはできなかった。それでも、俺がとどめを刺すのを受け入れていた。
今俺は、とある王国で宮廷魔術師なんてことをしている。王は、あの時の勇者だ。剣士は魔王を倒した事で勇者となり、同行していたヒーラーの女性は王女だった。
旅の中でも夫婦漫才のようだった2人は無事に結ばれ、今は王と王妃だ。そしてその縁もあって、俺は宮廷魔術師になっている。
俺の手には今、あの時アルフレッドがくれた片耳のピアスがある。この意味をヒーラーに聞くと、彼女はとてもゲスな顔で笑って教えてくれた。
対の片方を渡すのは「その相手と対になりたい」という意味なのだと。
聞いて、鼓動が跳ねたのを覚えている。だが不思議と拒絶はなく、それどころか嬉しい気がしていた。おそらく俺もその頃には、アルフレッドを想っていたのだろう。
「レイ、何見てるんだ?」
「アルフレッド」
見れば戸口に見慣れた相手がいる。彼は王となった勇者の補佐をしていて、今も一緒の城に住んでいる。
彼は俺の手元を見て「あっ」と声を上げた。
「それ、持っていてくれたのか」
「俺の宝物だ」
「なんか、恥ずかしいな」
すっかり大人になって、俺も背が伸びた。にもかかわらずアルフレッドは俺よりも背が高い。隣に立つアルフレッドの表情は柔らかく、俺も同じく笑顔でいられる。俺の大切を沢山作り、増やしてくれた人だ。
「なぁ」
「どうした?」
「好きって、言ってくれよ」
「? 好きだ、アルフレッド」
珍しく求められ、首を傾げながらも俺は口にする。好きな相手に好きだと伝える事になんら疑問もないし、言葉で確かめたくなる事もあると知っている。だからこそ言ったのだが、アルフレッドは顔を赤くしている。
「変な奴だな」
「悪かったな。なんか、その……思った以上に滾る」
「? 夜まで待ってくれ。流石にこの時間から寝室に籠もるのは」
「分かってる! 俺も我慢できるからさ。こう……無性に確かめたくなっただけ」
やっぱり、俺にはまだ人の感情というのは少し難しい。いや、同じく人ではあるのだが。
それでも大事な事は手放さない。この、胸の内を温かく流れる少しくすぐったい感情を、俺はこれからも大切に育てて行こうと思うのだ。
END
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