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双子には不思議な感覚がある。それを神秘的なもののように取り上げる人は多いけれど、そんないいものじゃない。
少なくとも、俺にとっては。
◆◇◆
金曜日の夜、不意に疼く体を俺は持て余す。体中を触れられる感覚は首筋から鎖骨を通り胸元へと到達すると、乳首の辺りを酷く嬲られる。ジクジクと、誰にも触られたことのない乳首の辺りやその奥が疼いていく。落ち着かなく、時に背中にまで響く感覚に微かな声を上げ、俺は自らの手で感覚を追うように触れる以外にできない。
「はぁ……あぁ、んっ、ふっ」
ザワザワとした感覚は脇腹を、そして更に下へと到達して敏感な昂ぶりにも触れる。スエット、更にパンツの中にまで手を突っ込んで先走りに濡れるものを握り込んで慰めるしかない。これが酷く響くのは、全部あいつのせいなんだ。
俺には双子の弟がいる。双子と言っても似ているのは見てくれだけで、性格はまったく違う。奥手で引っ込み思案な俺に対して、弟の御影は社交的で明るく友人も多い。だが、性格は最悪だ。
「ちくしょう……」
体はドンドン昂ぶり、尻の中まで弄られる感覚に悶えながら喘ぐ俺の目からは知らず涙が零れていた。これは、酷く残酷な現実なんだ。
俺と御影の間には共感覚というものが多分ある。遠く離れていても弟か強く感じる事が俺に伝わる。逆もそうらしい。怪我をしたらその箇所が痛かったり熱かったりで辛い。そしてあいつが快楽を得るとそれが俺に伝わる。
今がまさにそれだ。そして弟と今まさに抱き合っているだろう相手は、俺の好きな人だ。
ズルズルと体の中を何かに穿たれる感覚に、俺はビクンと足先にまで力が入る。ゾワゾワ、ゾクゾクする感覚が止まない。腰骨から痺れて響いて背中を這い上がって脳みそまで到達する。眼裏がチカチカして真っ白になる感覚に息ができないくらい感じているのに、俺は苦しい。こんなのもう、知りたくない。
手の中でパンパンに膨らむものが早く解放してくれとドロドロに濡れる。俺は追い上げて、頭の中もパンパンになってやがて果てた。
感覚が消える。でも俺の痛みは何も消えない。どうしてあいつはいつも、俺の好きな人を奪ってこんな残酷な感覚を共有するんだ。
「ちくしょう……」
もう、何も知らないままであれればいいのに。
グチャグチャで気持ち悪いのに、それを処理する気力も俺にはない。綺麗な方の手で目元を覆い、俺はひたすら声を殺して泣いていた。
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