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◆◇◆
目的の森について、少し狩りをしたら暗くなる。野宿の準備をして火を起こし、周囲に結界を張って準備を終える。
そうすると少しして赤い夕日に影が差し、此方に向かい降りてくる。その途中で影は小さく、人の形になって地面に降りた。
「リオン、ただいま」
「おかえり、放蕩息子。今日は何処まで行ってたんだ?」
「息子じゃないし」
ふて腐れた青年は随分な美青年に成長した。そして、手にしていたリンゴを俺に1つ放ってきた。
ヒューイはドラゴンの中でも上位種、風を操る白竜だった。旅を始めて1年で飛ぶことを覚え、更に2年で人の姿になる事ができた。恐ろしい成長だ。
そして今はかなりの美丈夫であり、美青年になっている。
短く刈られた水色混じりの白髪に、切れ長の緑色の瞳。肌の色は白く、背は俺を越えた。腰には剣を差している。
「俺達、親友だし」
「いや、いつから親友になったんだよ」
冗談っぽく笑って言っても、ヒューイはしょぼくれる。その頭を撫でてやり、俺はたき火の側にヒューイを招いた。
「で? 仲間に会ったんだろ? いい子いたのか?」
問えば、ヒューイはこれにもムッとする。そして俺の後ろに回ったかと思えば腰を抱いて座った。
「なに、どうした? 甘えたか?」
「……俺、もっといい男になるから」
「? おう、頑張れ」
「リオン、年取らないで」
「いや、無茶言うなよ。お前と違って俺人間で老いるの早いからな」
「嫌だ、止めて」
「おーい、どうしたー?」
俺の肩に顔を埋めながらも無茶な事を言うヒューイの頭を撫でつつ、俺は捕まえた魚を串に刺して焼いている。
こいつが俺に本気の求愛をするまで残り2年。ある春の一時だった。
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