46人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺、市村先輩のことがガチめに好きです」
そう宣言されたのはこいつ、篠田が入社して直ぐの6月くらい。営業回りしている間に雨に降られて雨宿りしている時だった。
俺は『先輩として』という事だと思って「おう、有り難うな」と返したら不思議そうに首を傾げ、営業先以外では酷く眠そうな目を俺に向けてこうだ。俺の方が首を傾げた。
ガチめって……その真意は?
「え? どのくらい?」
「結婚を前提としたお付き合いをしたいレベルですね」
「マジか! え……俺?」
自分に指を差して確認したら、ただコクンと頷きやがった。
俺としては戸惑いしかない。別に恋愛は自由だと思うし、好きになった人が運命の人ってのもいいと思う。けれど……俺か?
戸惑う俺の手を無表情のままガッシと握った篠田は、いつもよりも幾分真剣な目で俺を見つめた。
「とりあえず、お試しでお付き合いしましょう」
「え、既に決定型? お前グイグイくるな!」
「逃げ道用意したら逃げるじゃないですか」
「いや、そりゃそうだけど。え、俺の意志とか確認ないわけ?」
「確認しません、断りそうだから」
「俺の意志!」
「俺、絶対将来出世します。2年後くらいに同棲とかして」
「いや、俺の意志!」
無表情なままグイグイくる篠田の押しの強さに負けたのかもしれない。それに俺もこいつが嫌いなわけじゃない。普段は必要最低限な会話しかしないし無表情だけど、これで仕事は出来る奴だ。
それになんとなく犬っぽいなと思っている。しかも大型犬だ。ハスキー?
俺も独身で彼女もいない。正直仕事忙しいから彼女とかいらないと思ってる。そしてこいつといる時間が案外嫌いじゃ無い。
考えて、俺は笑った。
「まず、メシ友からだ」
「……分かりました。では今日は俺のオススメの店でランチしましょう」
「おっ、いいね」
こうして俺と篠田は一応? お付き合い? 的な事を始める事になった。
最初のコメントを投稿しよう!