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校門前で突然に
「俺と1ヶ月だけ付き合ってください!」
東京の寒さも増し始めた1月の事だった。本田詩織は下校際、レンガ造りの校門前で見知らぬ大学生風の男に告白された。
――女子高の前で怪しすぎる。
人違いだと言って、親友と一緒に怯えて逃げた。
次の日も、また次の日も告白された。周りで見ている生徒達の囁きも、大きくなっていった。
「動画配信用のドッキリでも撮ってるんじゃない?」
昼休み一緒にお弁当を食べていた親友の神結心亜が、最近SNSで流行っている30秒動画の話をした。
「なんでいつも私? スカウトなら分かるけど」
「分かるんかい!」
「花のJKですから」
詩織が心亜といつもと変わらぬ漫才みたいな会話をしていると、他の友達も加ってきて、あの男の話題で笑い合った。まさか、その日も待っているとは思わずに。
4日目ともなると路上ライブのように、所々遠巻きにギャラリーが出来ていた。さすがに校門から離れた場所で告白された。男に話しかけようとした心亜の腕を引っ張って逃げた。
5日目は先生に追いかけられながら、吉元新喜劇のような告白となった。その隙にさっさと逃げた。
休日を挟んだ放課後。ギャラリーが居たので警戒して門へ近づいた。たがそこに、あの男の姿はかった。次の日も、また次の日も。日に日にギャラリーは減っていった。
周りが興味を失うにつれ、詩織は気になってしまっていた。
――なんだったんだろう。どうしたのかな。本気じゃなかったのかな。
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