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二人はヴェネツィアン・ゴンドラを降りると、イタリア語で『美しい眺め』を意味する名前のレストランへ入った。運よく窓側の席が空いていた。
「ふぅ。お腹すいた」
笑いながら座ろうとした瑛太は、詩織の姿を見るとそのままの姿勢で固まった。脱いだダッフルコートを椅子の背もたれに掛けた詩織と目が合う。
「瑛太? どうしたの?」
「詩織……スタイルいんだなと思って。いや、違う、ごめん! そうじゃなくて。ほら、私服、初めてだからさ! 可愛いよ」
顔を真っ赤にして席に着く瑛太。その慌てようが詩織には可愛く見えた。
――でも超恥ずかしい、けど嬉しい。
きっと自分の顔も赤くなっているだろうと詩織は思った。
窓の外には、うっすらと雪が積もったイタリアの港町。静かに舞い降りる雪の向こうには、別エリアの噴煙を上げる火山が見える。そんな幻想的な景色を、詩織は好きな瑛太と眺めている。瑛太がこの幸せが今日で終わる事を寂しく思っていてくれたらいいなと思いながら。
食事が終わる頃には、雪は降ることをやめいた。外には白い景色と底冷えだけが残っていた。
その後も楽しむことに集中して、2人でたくさん笑いあった。絶対いい想い出になると詩織はそう信じていた。
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